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みんなが納得できる医療を求めて [仕事のこと]

患者さんはもちろん、患者さんのご家族も、
その患者さんに関わる人たちも、
医者も看護師も、そのほかの病院スタッフも、
みんなが納得できるような医療って、どんなものでしょうかね。

私は、大学病院に勤めていたとき、
血液内科を専門としていました。
当然、病棟の入院患者さんは白血病やそのほかの
難治性の病気ばかり。
しかも、病気の性質上、割と若い人が多くて、
どうにかしてあげなくちゃ、と、
いつも全力投球していたような気がします。
私も若かったから、そんなことができたのかな。

白血病の治療は、本当に大変なものでした。
抗がん剤の副作用はつらいし、
抗がん剤の後の白血球減少から、
感染症を乗り越えるまでがとにかくつらい。
抗がん剤治療を完了して、良くなる人もいれば、
それではよくならずに、治療に苦労する人もいる。
若い人が多いから、と言うわけではありませんが、
大学病院でもあったので、治療を決してあきらめない。
最後までがんばる。
患者さんはもちろんのこと、医者も看護師も、
とにかくがんばる。
骨髄移植の時には、専属チームを組んでがんばる。

そんなときの治療は、みんなが納得して行っていたのでしょうか。

今振り返ると、本当に求められていた治療だったのか、
不安になります。
当然、治りたい、治したい、と言う気持ちはみんなにあると思うのですが、
それが当然、と言うことで、治療の押しつけになっていなかったか。
説明はしていても、納得して治療ができていたのか。


今日、今の職場で入院していた肺がんの患者さんが亡くなりました。
その患者さんは、身寄りが無い方で、特別養護老人ホームに入っていた方なのですが、
9月の終わりに大量の胸水がたまっていることがわかり、入院されました。
入院後の検査で、肺がんであることがわかり、さらに肝臓への転移も認められていました。、
現時点で手術の適応なし、と判断されたため、
大きな病院への受診もせず、当院で症状緩和のための治療を行うことになりました。

胸水を抜くためのドレーンを挿入されて、酸素を投与されて、
少し動くことで、息切れがして、血痰が出て、腹痛や背部痛も訴えられて、
とにかくつらい1ヶ月でした。

先週の水曜日、あまりにも痛みが激しかったため、
症状緩和のためにオピオイド系薬剤を使用し始めました。
それによって、少し楽になったようで、穏やかな表情となっていました。
先週の木曜日には、ホームの職員さんが、
もしかしたら最後になるかもしれない、と言って、
ホームに外泊させてくれました。大好きなお酒を飲ませたいって。
帰院したとき、彼はとてもいい顔をしていました。
でも、お酒は飲めなかった、と言っていました。

そして今週に入ってから、
自分は、今の治療に納得できないんだ。
どうして手術ができないのか、納得できない。
たかが内科の医者に、手術ができないって言われても、
それは頭が痛いのに皮膚科に行って治療をしてもらっているようなものだ。
自分は、癌の専門医に、手術が本当にできないのかどうか聞きたいんだ。
と言うことを、話されていたとのことでした。


治療は、患者さんのためにするものだと思うのですが、
確かにこの方の治療に関しては、選択が難しかったかもしれません。
はじめの頃、癌だと告知したときに、
本人が大きな病院に受診してみたい、と言うことを言っていたのですが、
院長は、その必要が無い、ということで、却下してしまったのです。
そのときに受診させていたら、その人の思いは変わったのかな。
少しは納得して最後を過ごせたのかな。
なんか、そんなことを思ってなりません。

治療は、医者の独りよがりではいけない。
患者さんに振り回されてもいけない。
患者さんの家族に不審を抱かれてもいけない。
患者さんにも、患者さんの家族にも納得してもらえる治療をしたい。
みんなが納得できる治療を、可能な限りしていきたい。
そんな希望を持って、仕事をしています。
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