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人生の終点 [仕事のこと]

医師の仕事は、病気を治すこと、病気を防ぐこと。
そして、人生の終わりを見届けること。

ターミナルケアは、一般的には末期がん患者さんのケアのことを言いますね。
しかし、それだけではないと思います。
ターミナル、という意味は、終末。
つまり、ターミナルケアとは、終末医療と日本語では言います。

終末期、とは、どのような時期なのか、おわかりですよね。
つまり、人生の最後の時期、ということです。
がん患者さんのターミナルケアはもちろんのこと、
老人医療の終末期も、一種のターミナルケアなんです。

ターミナルケアで大切なことは、
QOL。
Quality of Life
生活の質。生命の質。
QOLを重んじることで、自ずと自分のとるべき立場が決まってきます。
よりよい人生の終末期を迎えていただくために、どのようなことができるのでしょうか。

がん患者さんのターミナルケアなら、
苦痛を取り除くこと。
痛みを取り除くこと。
心の平安が得られるように、働きかけること。
これらのことは、だいぶ医師にも家族にも浸透してきました。

それでは、老人医療の場では、どうでしょうか。
お年寄りのQOLを、家族も医療側も大事にしているでしょうか。
元気に年をとっていた方でも、ちょっとしたきっかけで寝たきりになります。
認知症になったり、脳梗塞などで麻痺が出たり、
色々なことが起こる可能性があります。
そのようなとき、患者さんがどのようにしてほしいのか、
意思確認が非常に難しいことがあります。
何を基準にして、治療を選択するべきなのでしょうか。

人間的活動の一つに、会話を楽しむ、ということがあります。
会話をすることで、その人の人となりを理解します。
会話ができないと、その人のことを把握できません。
だから、会話ができる、できないは、重要なポイントとなるでしょう。

そして、自分で自分のことがどれだけできるか。
また、食事が食べられるのかどうか。

脳梗塞後遺症や認知症の場合、
嚥下機能の低下が認められることがあります。
嚥下障害が強くなると、誤嚥―気管に唾液や食物残渣が流れ込むこと―
が起きてきます。
誤嚥がたびたび起きるようになると、
それが基で誤嚥性肺炎を起こすことがあるのです。
だいたいは誤嚥性肺炎が起こってはじめて、
「そういえば、むせていたかも…」ということに気づくのです。

誤嚥性肺炎が続けば、医療側としてはまた肺炎を起こすから、
経口的に食べさせることが怖くなる。
嚥下機能の評価をして、
果たして今後、食事を十分量経口摂取できるか判断する。
そして、経口摂取できない、と判断が下ったとき、
その後の人生の送り方の選択は、
多くの場合、家族にゆだねられます。

本人の意思がはっきりしていて、
遺言状を残していたり、家族にしっかりその意思が理解されていれば、
何の問題もなくその通りにするのですが、
そうでないケースの方が多いです。

家族は困りますよね。
いきなり、「この方はもう食べることができないので、今後のことを考えてください。」
なんていわれたら、驚いてしまいますね。
そして、十分な知識がないまま、医者の言いなりになる家族も多いのが事実です。

医師には、患者さんの人生の終わりを選択する権利があるんでしょうか。
人生の終わりを引き延ばしたり、
患者さんの意思に反した治療を施す権利があるんでしょうか。
確かに、意識がはっきりしない患者さんの意思確認なんてできませんが、
家族の意思を重視する必要があるのではないでしょうか。

その人の人生の終末期に、医師が土足で踏み込んで、
荒らしてしまうことだけは、避けたい、そう思います。

何でこんなことを思ったか、って?
それは、次回。

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