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仕事の目的 [仕事のこと]

自分が仕事でめざすことは、患者さんや、患者さんのご家族の笑顔を見ること。
診療によって、笑顔になっていただけるのが、最大の目的。
当然、その中には病気が良くなる、と言う条件はありますが、
病気が良くなることで、患者さんの笑顔が見られるのが一番うれしい。
たとえ良くならなくても、苦痛を取り除いてあげられるように、
苦痛が取り除かれれば、多少の笑顔が戻ってくるかもしれないから。

そう思って、いつも仕事をしています。
入院患者さんも、最初は苦痛や緊張、何でこんなところにいるのかわからない、と言う不安や、
自由を奪われたと感じる束縛感などで、難しい顔をする方がいらっしゃいます。
そんな方々が、入院して病気が落ち着いてくると、
多くの場合、笑顔を見せるようになります。
ただし、一方でだんだん笑顔が少なくなることもあります。
病気の進行を止められず、苦痛が増してしまうこともあります。

高齢者の場合、苦痛を軽くすることが難しく、
苦痛を取り除くために入院したはずなのに、
結局は検査検査で身体がつらくなったり、
治らない、進行性の病気ならば、病気のためにつらくなることもあります。
そういうとき、私たちにできることは多くはありません。
せいぜい、苦痛を取り除く薬を積極的に使用すること。
そして、苦痛を長引かせないこと。
何よりも、私たちが無駄な苦痛を与えないこと。

ターミナルケアの考え方は人それぞれだと思います。
ただ、重要なのは患者さんを1人の人間と認識し、
人間の尊厳を最大限保って、最後を迎えていただくこと。
無理な延命、無理な検査をしないこと。
これが重要な事柄だと思うのです。

ある患者さんが、入院しています。
その患者さんは、90歳以上の超高齢な方で、
もう15年以上太ももに大きな傷があって、それが治らない。
最近は、片方が巨大潰瘍を形成し、痛みが半端ない。
入院したばかりの時、皮膚科の先生が、
皮膚がんかもしれない、と言っていたので、
メインの主治医の整形外科の先生が生検することをまず決定。
しかし、患者さんの奥さんが、
「診断ついたって、何もならないから」といわれ、止めたんです。
それを、院長が再び
「高カロリー輸液を行わないなら、生検ぐらいさせろ」
と言うことで説得。
結局は、生検自体が、大出血の可能性がある、と言うことで
危険を押してまで生検する価値はない、と言うことになり、中止。

奥様の望みは、もう、何もせずに、自然に、苦痛だけ取り除いてくれればいい、と言うこと。
それをずっと聞いているので、必要最低限の医療を行い、
それ以上のことは手を出さなかったこちらサイドだったのですが、
院長がそれをなぜか許してくれない。
ターミナルケアを許してくれない。
なんだか今日は、苦しくなってしまいました。

院長の気持ちもわからなくはないのですが、
でも、それで患者さんやご家族が笑顔になるのでしょうか。
つらい、痛いと言っているのを見ている家族の苦痛、
わかるのでしょうか。

ほんの少しでも、わかっているとうれしいですが。

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